こんにちは。林です。
年末年始の空いた時間で「LIFE SHIFT 2」を読んだんですが、この元の「LIFE SHIFT」も忘れかけてたので、対比させながら理解を深めました。せっかくですので、ブログでまとめてシェアしたいと思います。
人生100年にもなければ、人生の課題も、ライフスタイルも、キャリアも、様々な選択肢が考えられます。LIFE SHIFTはさすが名著なだけあって、この複雑で見通しにくい問題に鋭く切り込んでくれます。LIFE SHIFTとLIFE SHIFT 2の違いを紐解きながら、問題の本質を探って行きましょう。
本記事のポイントは
です。では始めましょう!
目次
LIFE SHIFTやLIFE SHIFT 2の根底にある共通課題は「超長寿化」です。これは何も、近年いきなり始まったことではありません。
例えば1981年刊行の書籍を紐解くと
これは現在の定年が55歳から57歳が圧倒的に多いのに対し、年金の中心である厚生年金の支給は60歳だからである。
中流の上の生活法(青木茂)
との記述が見られます。40年ほど前の当時、定年は55歳から始まり、60歳の年金支給開始まで最長5年の空白期間があったことが分かりますね。これ、現在では60歳定年の65歳支給開始が標準です。つまり5年、そのまま後ろにずれてるわけですね。興味深いです。
1980年代は60歳定年が「努力義務」で、60歳定年になったのは1998年のことです。さらに改正高年齢者雇用安定法により、2025年4月から65歳定年に引き上げられる予定です。なんなら今は70歳まで働きましょう、という雰囲気もありますよね。
このように定年年齢一つとっても、長い時間をかけて着々と長寿化に対応してきている歴史があります。
40年以上前から認識されている長寿化なのに、なぜ今になってLIFE SHIFTが注目されたかというと「3ステージモデルが破綻」するレベルで超長寿化しているからです。
3ステージモデルとは「教育」→「就職」→「老後」の3ステージで人生を考えるモデルで、長らくこれが主流でした。例えば上記「中流の上の生活法」の中にもライフプランの概念が出ていますが、典型的な3ステージモデルを前提に構成されています。
当時も長寿化は着々と進行してましたが、まさかこの3ステージモデルが破綻するとはつゆほども思ってなかったでしょう。当時は一億総中流時代と言われ、よりよいマイカーやマイホームに皆が憧れ、より上質なモノの所有を目指した時代でした。
しかし今、終身雇用の崩壊が叫ばれている通り、この3ステージモデルが崩壊の危機(もしくは既に崩壊状態)に直面しています。定年が55歳→60歳ならまだ3ステージで行けても、65歳、70歳になってくると、もう限界なわけですね。
そこに一定の解決法というか「考え方の枠組み」を提示したのがLIFE SHIFTだったわけです。そりゃぁ、みんな飛びつきますよね。
LIFE SHIFTでは、人生を100年スパンで捉え、生き方の戦略や行動指針について幅広く論じています。超長寿化の時代背景に支えられ「人生100年」という分かりやすいフレーズも相まって、大きな注目を集めたと言えそうです。
さてこのように注目を集めているLIFE SHIFTですが、2021年後半にLIFE SHIFT2が出版されました。FPとしてこれは無視できない(笑)と思い僕も手に取って読みました。LIFE SHIFTとLIFE SHIFT 2(以下2)の違いについて結論から言えば
と言えそうです。
LIFE SHIFTは概念や考え方の枠組みが中心で、2はその中の特定の概念をピックアップして事例を交えながらさらに深堀りしていく構成になっていますね。
LIFE SHIFTと2は同じぐらいのボリュームなので、LIFE SHIFTの方が多くの概念や説明が含まれています。例えばLIFE SHIFTの第7章では「新しいお金の考え方」としてライフプランの概念が30ページ割いて説明されています。が、2の方にはそれに明確に対応する章がありません。
もちろん人生設計とお金の話は切っても切れませんから、2の中でもお金の話は随所に現れます。ただ、2ではお金の設計に関してはある程度「既に知っているもの」として話を進めている印象があります。
2の主題は「社会変革」です。人生100年時代で人生の選択肢が爆発的に増える中、仕事はAIに置き換わっていくというなかば「カオス」な状態なのが現状です。その理屈は分かっていても、社会制度が全く追いついていないというのが著者の問題意識。
そのため、2の冒頭でも読者に社会変革を促す「社会開拓者になろう」という強いメッセージを出しています。
これがLIFE SHIFTと2の主題の違いでしょう。そのため2では、より具体的な行動を促すような構成になっていると理解できます。
両者の違いが端的に分かる部分として、タイトルと表紙に着目してみましょう。
デザインがほぼ同じなので気づきにくいですが、LIFE SHIFTは100年時代の「人生」戦略になっているのに対し、2は100年時代の「行動」戦略となっていて、人生→行動に変化しています。これを見るだけでも、2がより具体的な行動戦略や行動指針にフォーカスしているんだな、ということが分かります。
余談ですが、共著者はいずれも同じで、第一著者(左側)が入れ替わっています。通常、第一著者がメインで執筆しますから、著者の視点も大きく変化している、と考えて良さそうです。実際、読んでて違う人の本かな?と僕も感じることがしばしばありました。
全く余談でしたね。はいすいません(笑)
LIFE SHIFTと2の違いが理解できたところで、我々FPは何をどうしていけばいいんでしょうか。一緒に考えてみましょう。
まず両書で指摘されているのが「AI化」です。AI化によって単純な仕事や数字を扱う仕事が機械化されていくに従い、特に金融業の従業員は苦境に立たされる、という見方があります。これはこれで一理あると思います。
ここからは僕の持論、意見になりますが、今後FPは「金融(セールス)業から離れていくべき」だと考えます。金融サービスそのものがAI化していくならば、そこで働くのはかなりの苦痛ですし、価値も与えにくくなっていくでしょう。
そんな「苦行」をする必要は全くありません。その代わり、顧客の「伴走者」となるべきです。これからの超長寿時代では、人生の選択肢が多様化していきます。ということは今後、人生を生き抜く戦略立案が難しくなることを意味しています。
また人生が多様化することで、一人ひとりの戦略も違います。誰かのマネをすれば生き抜けた昭和的な時代は終わり、自分の人生を、個別に真剣に考えなければ生き残ることすらままならない時代だと言えます。
そんな時代に「全て1人で考えなさい」というのは、あまりに負担が大きすぎます。ただでさえ仕事や生活のストレスや労力が多い中、お金や人生戦略を1人で考え抜くのは決して容易ではありません。だからこそ、FPがライフプランを通じて、顧客それぞれの人生に伴走し、必要なタイミングで随時、支援し・応援していく。
そのような存在になることができれば、FPがAIに負けることは、少なくともしばらくはなさそうです。
FPは人生戦略を立案するための、非常に重要な役割を担っていると僕は考えます。今、あなたは保険販売がメインかもしれませんが、そのような金融セールス業はいずれAIに淘汰されていくことになるでしょう。
消えゆく産業に固執するのではなく、新しい働き方、新しい役割を目指していくべきです。それがLIFE SHIFT 2で指摘されている「社会変革」の一つになると個人的に思います。
社会変革と聞くと人並み外れたリーダーシップが必要になるのではないか?などと尻込みするかもしれませんが、決してそういうことではありません。変革というのは「小さな意識の変化」から生まれます。
独立研究者の山口周氏は著書「ビジネスの未来」の中で『(変革のためには)「私達自身の思考・行動様式をどのように変えるか」という問いが大事』と述べています。僕たちは無意識の中で今までの常識や思考様式に囚われ、「そんな事はできない」と条件反射的に考えがちです。
しかし、そこを意識的に変えることによって変革が始まるということですね。FPからまず意識を変える。それがリーダーになる、ということです。
つまるところ、変革とは人々の意識の変化だ、といえます。僕もできるだけ多くの人の意識を、当然ながら可能な限り良い方向へ変えるために、これからも情報を発信し続けます。
LIFE SHIFTとLIFE SHIFT 2を紐解きながら、今後のFPの方向性について考えてみました。LIFE SHIFTと2はそれぞれ
という違いがありますので、目的に応じて読み分けるのがお勧めです。両方読むのがベストですが、時間と労力が足りない方はLIFE SHIFTだけでも、全体像は理解できます。
社会変革と聞いて、なにも尻込みする必要はありません。ほんの少し、意識を変えるだけでいいのですから。この2冊があなたの意識を変えるキッカケになればと思います。
それではまた。
LIFE SHIFT/2についてはこちらの記事もご参考に。
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