こんにちは。林です。
過去の僕も含めて、あなたは、学ぶといえば「とにかく本をたくさん読んでインプットする」と思い込んでいませんか?
例えば年間100冊、あるいは1000冊読んだと言われれば、それは凄い!ってなりますよね。しかしそれは読書の一面でしかなく、そこに目を奪われると本質を見失ってしまうのです。では何のために学ぶのか、どう学べばいいのか?その秘密が、読書猿氏の独学大全という本に隠されていました。わぉ。
読書猿氏の「独学大全」という本は、その名にふさわしく大変分厚い本で、厚みを測ったらジャスト50mmありました(測るんかよw)。普通のビジネス書籍が15,16mm程度なので、3倍以上ですね。あまりの厚みと重みに、俗に「鈍器本」とも表されているようです。
そんな事典か鈍器か分からないぐらい、威圧感たっぷりにも関わらず、不思議な魅力をこの本は放ってるんですよね。そんな魅力たっぷりの独学大全のどこがどういいのか、また55技法の一つ「目次マトリクス」の実践結果も、レビューも兼ねてお話してみたいと思います。
目次
技法の実践と紹介は後ほど行うとして、まずは独学大全の魅力を僕なりの視点で3点ほど、お伝えしたいと思います。お伝えさせてください。お願いします。
そんなのうざいからさっさと技法を教えて!という方は、大変残念ですが、スキップして次項からお読みください…。ぐすん。
学びの価値を示す例えとして「魚を与えるのではなく、釣り方を教えよ」という老子の言葉はよく耳にすると思います。ここで詳しく解説することはしませんが、釣り方を知ることで、一度学べば繰り返し応用でき、とても実用的で価値が高いことはすぐに理解できます。
一方でさらにその上の「学ぶことを学ぶ」価値を示す例えは、僕自身あまりみたことがありません。というか、一つも見たことがない。
学ぶことを学ぶ効用として
などがパッと思いつきますが、たったこれだけ見ても、ワクワクしますよね。であるにも関わらず、恐らく学ぶことを学ぶ人は、学ぶ人よりもさらに少ないと思われます。これは自戒を込めて言うのですが、とても残念なことです。
複雑で課題の多い現代において、必要な学びの質、量は増え続けています。しかし一方で僕たちは、学ぶことに対してとてもナイーブで、学ぶ=学校で教えられるイメージから脱却できていません。そのため、大学を卒業後(いや、大学の途中でさえ)学ぶことをほぼやめてしまう人が後をたたない。この事実は成人の学習時間が1日平均たった5分という数字にも現れています(平成28年社会生活基本調査・総務相)。
さすがにこれは危機的状況だと僕は思うのです。
そのような状況で、学ぶことの意味とは何か、効率よく学ぶためには何を、どのように学べばいいかを学ぶ(知る)ことは、非常に価値が高く、効果も高いと言えます。
有り体にいえば、独学大全を読んでしっかり実践すれば、学んでいない人にはもちろん、他の独学者にも大きな差をつけることができるでしょう。ジョブ型採用など、今後日本が実力主義になっていく中でこれは朗報です。
独学大全を読んでいると、そのことをヒシヒシと感じることが出来ます。
とはいえ、学ぶことを学ぶのは、意外と難しいことに、大いに賛同します。僕ももう40代後半ですが、なんたってこの歳に至るまで学ぶことを学ぶのは満足にできていませんでしたから。
世に「学習法」と呼ばれるものはたくさんありますが、その多くが「どう学ぶか(how to)」に焦点を当ています。なぜ学ぶ必要があるのか、何を学べばいいのか、という課題は読者に委ねられたまま。結局僕も、この独学大全に出会うまでは「中途半端」な状態で満足するしかありませんでした。
いえ、世の独学法が中途半端だというつもりはないのです。それぞれの学習法については、各著者が苦労して編み出された手法で、一つ一つにはしっかり価値があるのです。ただいずれも、学習へのモチベーションを生み出す「なぜ学ぶのか」や、一体この知識の大海をどうやって溺れずに泳げばいいのかといった、根本的な問いには答えてくれませんでした。つまりhow to だけでは、学ぶことを知ったとは言い切れないのです。
もちろん僕自身の努力不足だといえばそのとおりです。なぜ学ぶかや、何を学べばいいかは、別の書籍や文献を当たればいいだけの話ですから。でも、学び方の全体像を知らなかった僕にとって、それはあまりにも手に余ることでした。あなたも、学びたいことはたくさんあるけど、どう進めたらいいか分からない、という経験は一度や二度ではないはずです。
独学大全は、これらの根源的な問いに、かなりの紙面を割いて丁寧に答えてくれます。全4部構成で
となっており、全55技法のうち33技法までが1部(なぜ学ぶのか)と2部(何を学べばよいか)に費やされています。なぜ学ぶのか、何を学べばいいのかというのは、どう学ぶかに先立ってとても重要なことです。これらがなければhow toばかりを仕込んでも意味がないよ、と言わんばかりの構成であり、実際そのとおりなのです。
これだけの知識と技法が全て1冊に凝縮されて、手元にあるならば、もうやるしかないじゃないですか。美味しいごちそうが目の前にあって、豊かな香りを漂わせているのに、食べないで我慢できる人がいようか。いやいまい。
ちなみに当初、僕はこの本の価値を見誤っていました。大全(事典)として、必要な部分だけ読めばいいや、と。しかし一つ一つを読み進めるうちに、ほぼ全ての項目が僕にとって大いに価値があることに気付かされました。結局、ほぼ通読しています。自分のあまりの無知さに呆れます。
余談ですが、この本の各章の冒頭に「無知くんと親父さんの対話」が出てきます。最初、無知くんのことを鼻で笑ってたんですが、どんどん自分の事のように思えてきて…最後は応援してました。がんばれ、哀れな無知くん!
話を元に戻して、学ぶということについて、ここまで包括的なガイドは、独学大全の他に僕は知りません。単に僕が知らないだけの可能性も大いにありますが、唯一無二と言っても過言ではないと思います。
内容についてはなんとなくイメージ出来たと思いますが、あとがきまで含めて752ページもある鈍器…いや大著が、税込たったの3,080円(紙版)とは安すぎます。ポップコーン食べながら映画を観るぐらいのお金で手に入ります。余談ですが、電子版より紙版がお勧め。余白にいっぱい書き込みできるから。
独学大全は単なる学びの事典ではなく、「知的エンターテインメント」+「包括的ガイドブック」+「事典」の3つの要素を兼ね備えていると僕は思っています。学びが深く、エンターテインメントとしても秀逸ですので、ぜひ手にとって、楽しみながら、学んで欲しいです。
もちろん読むだけでなく、ここにある技法を1つでも2つでも実践すれば、学びの質と効率が上がることは間違いありません。大事なことなので繰り返しますが、これで3,080円(税込)は安すぎます。今すぐポチりましょう。たった飲み会1回分です。
さて前置きが長くなってしまいましたが、いよいよ55ある技法の一つ「目次マトリクス」を実践しましたので、自らのアウトプットも兼ねてご紹介してみますね。
今回この技法をご紹介する理由は、恐らく僕と同じように、たくさんの書籍や文献に埋もれて溺れかけている人が多いだろうと思うからです。この知識の海を上手に泳ぐためには、大量の知識を取り回す「足場」が必要です。目次マトリクスはその足場の一つとして、大いに役立ってくれるからです。
目次マトリクスは「何を学べばよいか」に属する技法の一つです。どう学ぶかの前に、何を学ぶべきかを見極めるのは、前項でも書いたとおり、極めて重要です。
過去の僕も含めて、恐らく皆さんは、学ぶといえば「とにかく本を読んでインプットする」と思い込んでいませんか?例えば年間100冊、あるいは1000冊読んだと言われれば、それは凄い!ってなりますよね。しかしそれは読書の一面でしかなく、本質ではありません。
なぜなら学びとは、自らの問いへの答えを求める行為であって、インプット自体が目的ではないからです。だからこそ、何をインプットすべきか、その取捨選択が必要になってきます。独学大全では多くの書籍や文献を取り回すために必要な技法も紹介されていて、その一つがこの目次マトリクスという技法です。
一例として僕が行った目次マトリクス調査と、そこから得た気づきをシェアしますね。選んだテーマは「行動経済学」。以前からしっかり学びたいと思っていた分野です。また、何を学ぶかの素材として、こちらの書籍をピックアップしました。独学大全には書籍の選択法についての技法も紹介されていますが、今回は煩雑になりすぎるので省略します。
果たして目次マトリクスを使えば、これらの書籍のどこを、どのように学び進めればいいのか、指針が得られるのでしょうか。
百聞は一見にしかず。まずは独学大全をガイドに、僕が試作した目次マトリクスをご覧ください。
縦方向に各文献(書籍)が並び、横方向に各文献の目次から章見出しと概要を入力しています。概要が分からない場合は、キーワードだけでもOK。目次は文献データベースから抽出可能と独学大全には書かれていましたが、文献データベースの目次は大見出しだけのことがほとんどで、さすがに物足りないと思います。ですので、図書館で借りるか購入するかした方が僕はいいと思いました。ただし、100冊、1000冊規模で分析するなら、データベースでいいと思われます。
入力が完了したら、各章の概念、キーワードについて、文献間のつながりを可視化します。目次マトリクス上で、色付きの枠を線で結んでつながりを示したのがそれにあたります。本当なら似たような概念もつなげばいいのですが、僕自身は行動経済学の専門家ほどの知識がなく、概念までは汲み取れなかったので、今回はキーワードのつながりだけをみることにしました。
そんな初学者の僕でも、目次マトリクスから分かったことがたくさんあります。例えば、各文献について
のような分析ができました。
さらにこれらの分析から、以下のような学習方針を立てることができました。
途中計画変更はあるかもしれませんが、このように進めれば大丈夫だろうという安心感は何にも代えがたいですね。
このように、書籍の目次とキーワードだけから様々な特徴を汲み取り、その後の学習方針を立てられるという事実を知ったのは、僕にとって非常に画期的な経験でした。
今まで、これといって学び方を知らなかった僕の読書スタイルは、とにかく1冊ずつ通読するという「力づく」なものです。イメージとしてはこんな感じの読み方。
この方法は単純明快でシンプルというメリットはあるものの、必然的に自分が学びたいこと以外の情報もインプットせざるを得ないため、精神的に苦痛というか、知的興味よりも作業に近い読書となることが多々あります。それゆえ、このまま読み進めても大丈夫かと不安になり、長続きしません。結果、本をつまみ食いしては放置して…ということを繰り返していたわけです。お恥ずかしながら。
こうした力づくの学習は、いわゆる「点」の読書を機械的に並べただけであり、戦略もへったくれもありません。ですので、各書籍間の関連も把握しづらく、時間効率も理解の効率も非常に悪いものだと言えます。
一方、目次マトリクスから導き出した上記の学習方針は、1冊を通読する方向と、複数の書籍を横断する読みとを組み合わせており、独学大全でいうところの「面の読書」に一歩近づいた形にできそうです。これならば時間効率を高めながら、かつ興味も理解も深められるという、一石二鳥、三鳥が期待できます。例えば上の読書方針を実行する場合、読み方はこんな感じになると予想できます。
しかも本を読む「前」に方針と各書籍を取り回す基礎が得られるので、時間効率がものすごく高く、非常に助かります。例えばこれが今回のように6冊(7冊)ぐらいなら、力づく読書でもなんとかなるかもしれませんが、10冊、20冊…と増えていくに従い、一体自分が今何を、何のために学んでいるかという根っこを見失い、迷子になりそうです。そんなとき、目次マトリクスという「文献の地図」があれば、迷わずに済みますよね。
僕にとっては、なにより沢山の書籍を目の前にして、気後れしなくなったのが一番の収穫でした!
いいですねこれ。早速あなたも目次マトリクス、作りましょう!(笑)
メリットばかり言いましたが、デメリットもなくはないです。
多くの場合、メリットのほうが大きいと思われます。
僕が感じた独学大全の魅力と、技法の一例として僕が試した「目次マトリクス」の特徴についてお話しました。まだまだ伝えきれていない気もしますが、この記事は一旦これぐらいで終わりにしようと思います。長すぎても辛いですよね?(笑)
要点をまとめると、まず独学大全の魅力について
事例として挙げた目次マトリクスについては
という特長がありそうです。効果が高い技法ですので、こちらもおすすめです!
学ぶことへの学びの投資は、非常に価値が高いです。もちろん、目次マトリクスは独学大全のごく一部でしかありません。ぜひ、独学大全、手にとって学んでみてくださいね!
本記事の主旨とは直接関係ないのですが、行動経済学を事例にもってきたので、興味を持つ人もおられるだろうと思い、補足しておきます。
僕自身最近知ったのですが、行動経済学(の主に行動≒心理学の部分)は、近年その効果を疑問視する結果がしばしば出てきているようです。元々心理学実験ではアンケート調査に頼るなど結果の客観性を担保するのが難しいため、そういうことが起きやすいと思われるのですが、けっこう再現性が低い、もしくは無い結果がバンバン出てきてるようですね…。例えばこちらのnoteがかなり興味深く、参考になりました。ありがとうございます。
心理学・行動経済学等の著名な研究論文が次々に追試失敗(手記千号氏)
このnoteで指摘されている「再現性実験に失敗」した、または疑わしい例を挙げると
※いずれも上記noteでの指摘を抜粋。詳しくはnote参照。
などなど…。いやぁ、いっぱいありますね(汗)結構、聞いたことがある項目が含まれている人も多いのではないでしょうか?
上記の「プライミング効果」は本記事にもある「ファスト&スロー(ダニエル・カーネマン)」も4章で取り上げています。またそれを基礎とした論理展開もあるため、そこが否定されると、著書の信頼性にも影響が出てきますね。(ちなみにファスト&スローが全否定されているわけではなく、Shimmackの調査で11の章のうち5つが否定、残り6は肯定されている)
古典的名著にも誤りが含まれているとなると、独学の方向性にも影響を与えかねませんが、まずは古典を学んでから、最新の研究で補足していく、というのがやはり定番だと思います。上記追試の結果を踏まえつつ、一旦は上記古典から行動経済学を学んでみようと思っています。
これだけたくさん追試に失敗していると、行動経済学や心理学全体が否定されているような気分にもなりますが(苦笑)、そういうわけではありません。上に挙げたものは大量の研究の一部であり、有益なもの、追試や検証を耐えて生き残っているものもあり、むしろそちらのほうが多い、ということは覚えておく必要があります。また、追試自体にさらなる検証が必要な場合もあり、上記にあるからといって100%否定されているわけではありません。効果が疑わしいな、というぐらいで捉えておくといいです。
また、仮に結果が否定されたからといって「だから学者や専門家は信用できない」という態度を取るのは極端な話です。確かに許すべきではない行為に走る専門家もいますし、実際そうであれば非難されるべきですが、それはごくごく一部。多くの方は努力家で誠実ですし、少なくとも自分の専門ではない分野に明るいことは確かなので、これからも学者、専門家の必要性は変わらないと思います。我々一般人はむしろこうした誤りと上手に付き合っていくことを考えるほうが前向きなのかなと。
いやはや、真実を追求するのは、大変な労力や時間が必要なことを、改めて認識しました。
以上、補足でした。
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