バブル入行組のリストラ始まる。今後銀行員の取るべき道とは

こんにちは。行列FPの林です。

最近、銀行員や元銀行員からの相談も増えてきました。なんでだろう?とその背景を探ってみたので今回はその話をしますね。

今銀行員だったり、元銀行員で次のキャリアを考えているという方は、参考にしてみてください。

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目次

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銀行が抱える構造的不況

銀行は構造的不況に陥っていると言われて久しいですが、まずは簡単にまとめておきますね。出典は「銀行員はどう生きるか」浪川攻、講談社現代新書

  • 日本の少子高齢化の進展が早く、需要が伸びないので産業が停滞。結果、貸出先が減少する。
  • 銀行のビジネスモデルの賞味期限切れ。共通の信用情報に基づく貸付がほとんどで、貸付利息の過当競争が生じ、利益率が減少。
  • 日銀のマイナス金利政策による利息利益喪失。特に地方銀行は青息吐息。
  • そこへ追い打ちをかけるように、Fintech勢との顧客争奪戦。

銀行の既存のビジネスモデルは、すでに限界に近づいていると浪川氏は指摘しています。

はっきりいって、こんな話を聞いたら正直、げんなりすると思います(苦笑)。でも保守的な銀行が必要な改革を先送りしてきたツケでもあり、もう直視していくほかなさそうです。

もちろん危機意識がなかったわけではないですが、リーマン危機の中心地、米国に比べたら邦銀の改革進捗はかなり遅れていると言わざるをえません。

例えば米ウエルズファーゴはネット上でユーザーコミュニティを作り、そのデータを収集して新しい商品開発に活かしていています。またバンカメなどメガバンクはデジタル化で少人数、または無人店舗を展開し、コスト削減と金融のデータベース化を進めています。金融は既に、ITが主戦場だとすらいえます。

ネット上の情報発信やSNSでのユーザーとの交流ですら及び腰の邦銀とは雲泥の差と言えるでしょう。

銀行の本質的問題とは?

結局のところ、顧客を無視した商品ありきの発想が根本的問題なのではないかと思います。

実は米銀は、リーマンショック時に国民からボコボコに叩かれて、信頼回復に相当腐心したそうです。顧客の信頼回復に向けた努力が実って、米銀の業績は回復しました。ひるがえって日本はどうか。

僕は商品を売る事をもちろん否定はしないけど、そこには「お客のためになるか」という哲学がないといけない

もしその哲学なくして、商品が売れるから、儲かるからという理由だけで販売し続けていれば、その商品が売れなくなった時点で、存在価値がなくなるのは当たり前なんです。これは保険募集人でも同じことが言えます。

今の銀行は、融資という商品ありきの組織で「お客のためになるか」という発想が欠けているように思います。つまり、銀行=融資販売会社、という思い込みで仕事をしている。これは、以下の金融庁長官の言葉に端的に現れています。

コンサルティング業務が重要だと言われている。これは本当に真面目に考えたほうがいい。企業の側に立って、企業が何を必要としているか、いろいろな知恵を出して、それを提供するビジネスにしなければならない

遠藤俊英(金融庁長官)週刊ダイヤモンド2020/4/11号 特集「選別される銀行」より

裏を返せば、多くの銀行が、相手(個人や企業)の側に立ったビジネスが出来ていないということでしょう。

だから、マイナス金利や少子高齢化による貸出先の減少などで商品が売れなくなった途端、銀行そのものの存在価値に疑問符が投げかけられ、苦境に陥ってしまう。

これは相当根深い問題で、トップから現場まで、全員の意識改革が必要となる難題です。

花のバブル入行組の憂鬱

このような状況下で、大いに気になる動きも見え隠れします。バブル入行組のリストラです。

2017年の暮れ頃、3大メガバンク(みずほ、三菱UFJ、三井住友各グループ)が業務量削減や人員削減計画を発表したことはまだ記憶に残っていることかと思います。特にみずほグループは19,000人の削減案を発表し、その規模の大きさから業界内外から注目を集めました。

これらの人員削減計画は当時、「退職による自然減」ということで説明されましたが、将来のリストラへの布石ではないかとの心配を現場に植え付けることになります。

人員削減が欠かせないほどの状況なのに、はたして「自然減」だけで済むのかどうか。彼は現下の厳しい環境が続く限り、最終的にはリストラに踏み切らざるをえないのではないか、という気持ちでいる。

「銀行員はどう生きるか」(浪川攻)より

そしてその心配は、人員削減発表から2年以上経った今、現実のものになりつつあります。例えば昨年暮れに、こちらのような報道がありました。

みずほFG、現役行員の年金「一律減額」の大ナタ…バブル入行組の人員削減に実質着手(Business Journal)

今、バブル入行組は50歳突入目前であり、先程の50歳転籍のタイミングと重なりつつあります。ただ、バブル入行組の人数が多すぎるため、十分な転籍先を準備できないのが問題となっていて、実際のところ、リストラに踏み切らざるを得ない状況に追い込まれているのでしょう。

結局のところ、時代が銀行員に抜本的な変化を求めていることは確実だといえますね。

銀行員はどうすべきか

これをお読みのあなたは銀行員かもしれませんが、2つの選択肢があると思います。一つは銀行に残って、立て直しに尽力すること。もう一つは、自らの力で長期的に価値を提供できる方法を探ること、です。

どちらもラクな方法ではありませんが、そもそも人生に楽な方法なんてありませんよね。だったら、自らが信じる方向や、好きな方向に進めばいいと思います。

なぜなら、仕事は楽しくないといけないから。銀行員という狭い視野で考えるのではなく、ご自身の100年人生を考えた時、その大半の時間を費やす仕事が辛ければ、あなたの人生そのものが辛くなってしまいます。

それって、我慢してまでやるべき仕事なのでしょうか。あなたの人生を棒に振ってまで、捧げるべき時間でしょうか?

今こそ真剣に考える必要があるでしょう。

銀行員として残って立て直しをはかる

まず最初の方法として、銀行に残り、立て直しを図る方法。相当大変な道ですが、バンカーとして活動したいという信念があるなら、チャレンジする価値はあるかもしれません。

元々銀行は保守的な組織と言われていています。この保守的な組織は、これまでのビジネス環境には適していましたが、今ではその保守性が構造不況といわれる銀行の改革を遅らせ、さらに傷を深くする…というワナに自ら陥っています。

これを立て直すのは組織風土、文化から変える必要があり、相当の難事業だろうことは想像に難くありません。

加えて、銀行特有の人事慣行が立ちはだかります。

一つは頻繁な転勤。一つの場所に長く居続けることによる不正や癒着を防ぐのが目的といわれていますが、短期間で転勤を繰り返すのは長期的な改革にどれほどプラスになるか分かりません。最近でこそ働き方改革のもと、転勤の頻度は抑えられてきているかもしれませんが、まだ十分ではないでしょう。

もう一つは、一般に銀行員として働けるのは50歳前後と言われていて、その後は出向を経た転籍となることがほとんどだということ。転籍する人のための研修制度まで用意されていて、みずほ銀行ではこれを「たそがれ研修」と呼んでいるとか…。どんな制度やねん。笑

人生100年時代、50歳といえば実はまだまだ脂が乗っている年齢ですが、多くの場合早々にバンカー人生が終わります。

これではなかなか長期的な改革も難しいかもしれません。

銀行がなかなか変われないのは、こうした組織風土、慣行による影響も大きいといえます。

茨の道ですが、銀行に残るということは、そういうことでしょう。

自ら人生を開拓する道

こうした状況を鑑みて、自ら動き出す人も増えています。特に若くて優秀な銀行員は、銀行の「外」にそのチャンスを求めているようですね。

実際、銀行員の転職サイトへの登録数は増えていると言います。これはチャンスがあれば自らの力を銀行ではなく他の組織で活かしたいと考える人が増えているということでしょう。

実は僕のところに相談に来られる方も、(元)銀行員で、自ら人生を開拓しようとする人たちです。その人達はいろんな選択肢を検討する中で、独立もありうると気づいたというわけです。

顧客の価値を創造しよう

では変化することが避けられないのなら、どのように変化すればよいのでしょうか。これは冒頭の本質問題ともリンクするのですが

  • 顧客のためになる価値を提供する

ことが最も重要だと、僕は考えています。

言ってみれば当たり前のことですが、この記事の冒頭で示したように、実際にはほとんど出来てないわけです。実際には不要な貸付残高を増やそうとする。顧客にとって本当に利益になるとはいいがたい商品を窓口で無理やり売り込む。

その結果、顧客にそっぽを向かれ、銀行は苦境に立たされている。

あらゆる商品が売れなくなってきている現代で、今後も顧客に価値を提供できるものといえばコンサルティングサービスでしょうね。コンサルは、世の中が不確実、複雑になればなるほど、必要とされるサービスです。

ただしもちろん、コンサルを提供するには知識、スキルの継続的向上が必須です。資格さえ取ればいいという話では全然ないです。顧客のためのコンサルをする、という理念と現場感覚がなければすぐに顧客に見抜かれます。

まとめ:銀行員はコロナ禍を好機としたい

リーマンショックを機に米国の金融業界は様変わりしました。日本はどうでしょう。公的資金を注入するだけで、改革を先送りしてきたとは、言えないでしょうか。

だとすれば、そのツケが、いまやってきているのでしょうね。

米銀はリーマンショックを機に大きく変わりました。邦銀もコロナ禍をチャンスととらえ、変革できればいいのですが…。

今こそ銀行員の「覚悟」と「信念」が問われているのかもしれません。

今、銀行は岐路に立たされています。

行員個人が生き残っていくためには、銀行に残って歯を食いしばって改革する選択肢と、自ら人生を切り開く選択肢の両方を持ち、柔軟に判断したいですね。

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