こんにちは。行列FPの林です。
金融商品を扱うFPなら「顧客本位になって考えるように」という言葉を最近よく耳にすると思います。この顧客本位というものを考えるときに「コストは利益相反になるではないか」と考えるかもしれません。
「多くの商品にかかるコストは、顧客にとってマイナスしかない」
「コストってすべて利益相反だから絶対に顧客本位にはならないのでは?」
そう考える人も中にはいるでしょう。この考えも一理あって、必ずしも間違いとは言えません。
一方に利益が生まれ、他方に不利益をもたらすことを利益相反といいますが、「コスト」は本当に利益相反なのでしょうか。
顧客本位の業務運営に関する原則は、金融庁によって以下のように定められています。
「金融商品の分かりやすさの向上やルールを整備して投資家を保護するとともに、国民の安定的な資産形成を図るためには、金融事業者が顧客本位の業務運営に努めることが重要である」
フィーデューシャリー・デューティー(FD)とよばれる金融機関は顧客に対して利益を最大限にすることを目標にしなければならない義務があり、これを果たすことが求められるようになってきました。
では次からはもう少し具体的に「顧客本位」とは一体何なのか確認していきましょう。
目次
ここからは、顧客本位を説明するうえで必要な「透明性」「対話」について詳しく解説していきます。
コストは少ないに越したことはありませんが、実際にかかる必要かつ適正なコストはあって当然です。
例えばコストがまったくゼロの金融商品があったとしたら、お客さんにとってある意味理想的な商品といえるかもしれません。しかし実際にはコストがまったくのゼロだと、その商品の組成に係る人や日々の運営に係る人がまったく携われなくなってしまいます。
これでは継続して商品を販売することができなくなってしまい、メンテナンスもできませんから顧客本位とは到底いえないですね。そういう意味では顧客も「顧客本位のために」正当な対価は支払うべきです。
不要な商品であれば無くなっても問題ありませんが、自分にとって良い商品、儲けの出る可能性のある商品を継続して販売してもらうためにも、必要な費用は支払うべきなのです。
ただし本来、コストというものは市場との対話で決まるべきです。
金融商品も市場に溢れている状態で、販売会社ごとの機能などが差別化されにくくなるコモディティ化の状態にあります。そのような現代だからこそ、市場と「対話」しながらコストは決められ商品は販売されるべきなのです。
市場が活性化して商品が多く出回ればコストも均一化されやすいですが、その前に「透明性」がなければ「対話」もできません。まずは情報が開示され公にならないことには「透明性」の話まで行きつくこともできません。
「透明性」確保の観点から、金融関連の法律などに従った情報開示を行い、わかりやすさを重視した誤解のない内容であることに十分に注意しなければなりません。
金融庁が進めようとしているFDの本質的な中身は「透明性」を高めることなのです。
透明性を高めることにより、情報開示を拒む販売先は「透明性」を避けているのではないかと顧客から見られます。このように顧客からの「圧力」を利用し、適正な競争を促そうというのがFDの狙いなんですね。
情報を開示し透明性が高まった結果、コスト削減になったのであれば、過剰なコストであったという事実を確認したことにもなりますが、市場は少しずつ健全な環境に向かっていくでしょう。
当然のことですが、もともとの情報量にかなりの差があるため圧倒的に売り手が優位になるのは致し方ないことです。その中で対話を成立させるためには、原則やルールを設けてお互いのギャップを埋めることが大切になります。
このようなルールなどが設定されたとしても、専門性の観点から基本的に売り手のほうが優位な事は変わりません。
この差を少しでも埋めるためには、顧客自身も自分で知識をつけて開示された情報を正しく理解して対話の努力をし、納得した上で良い商品と思ったら買う、良さを感じられなかったら買わないという判断ができるようになるべきです。
仮に良い商品だと思っても「自分のライフプラン上では必要ない」などと判断できるようになると、より豊かに、かつ、効果的に人生を送れるようになるでしょう。
顧客本位のために、顧客が自身の真の利益を合理的に認識できるようにFPも努力すべきなのは当然のことですが、実は顧客本位は顧客が鍵を握っているといっても過言ではありません。
FPとしては顧客に任せっきりになるのは他力に頼ることになってしまうので、FP本人の努力も必ず必要になります。
情報量などで不利な立場になる顧客側に立ってサポートするというのがFP本来の役割といえるでしょう。
顧客にとっても金融機関等の市場全体を活性化させるためにも、FPの存在は未来永劫必要になります。顧客本位になって顧客側に立ち「透明性」のある「対話」ができる頼られるFPになりましょう。
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