FPとして杉田水脈氏のLGBT支援批判は受け入れがたい。

杉田水脈氏の「LGBT支援の度が過ぎる」
という新潮45への寄稿が各方面で
炎上してますね。

僕も政治的、思想的批判というよりも
FPとして仕事がしにくくなるのは嫌だな
という視点でコメントしたいと思います。

目次

杉田議員のLGBT支援批判記事

件の杉田水脈議員の記事が掲載されている
新潮45 8月号はこちら。

杉田氏が「全文を読んでから批判して」
とおっしゃっていたので、ちゃんと買って
全文を読みました。

ただ、僕自身LGBTの専門家ではなく
またよく批判の題材として引用されている
「優生思想」に詳しいわけでもありません。

ですので、その点について
ここで詳しく書くつもりはないです。

もし専門家らの批判を読みたいのであれば
例えば毎日新聞のこちらの記事

がよくまとまっていると思います。

なお、「優生思想」という言葉が
ほぼ「ナチ+優生思想」というセットで出てくるのですが
ちょっと補足しておきます。

僕も詳しくなかったので少し調べてみましたが
例えば世界大百科事典によれば優生思想の起源が
イギリスの学者ゴールトンが提唱した「優生学」
(1904年イギリス社会学会で提唱)だということが
分かります。

同事典によればその後優生学が世界中に広まり
例えば米国では世界に先駆けて断種法が成立し
当然ドイツでも同様に断種法が成立しています。

日本もその例外ではなく
国民優生法から続く優生保護法が
つい最近の1996年まで施行されていたことは
皆さんご存知かと思います。

そして日本においては
この旧優生保護法には障害者差別が含まれたため
批判的に母体保護法へ改正されたという経緯があります。

したがって、彼の国ドイツ一国の問題ではなく
当然日本を含む世界中で、何十年もの長い時間をかけて
(場合によっては良かれと思って)行われてきた
マイノリティ差別について考え直そうという文脈に
今あるわけです。

そうした世界的に大きな流れがある中で
杉田氏の寄稿記事に(今さら?という驚きを伴った)批判が
集まっているということは理解しておく必要があります。

またこうした優生学、優生思想は
右よりの思想と考えられる事が多いようですが
社会主義者や自由主義思想家も興味を示したと
指摘されている点にも留意しておく必要があるでしょう。

つまり、誰でも陥りがちな問題だということです。

これらの点については
杉田氏の寄稿を読む際の
最低限の基礎知識として
おさえておく必要があります。

FPは個人の幸せを「個人が」追求することを助ける職業

事の詳細は杉田氏の寄稿と
上記の記事等をご覧頂くとして
FPの立場として看過できない部分があります。

それは「人と人を根本的な部分で比較している」ということです。

杉田氏によればその比較基準は
「生産性」ということになるわけですが
これは言葉を変えればOKという
単純な話でもなさそうです。

我々FPは様々な人からの依頼を受けますよね。

夫婦子供二人のような今となっては典型とは言えない世帯、
共働き世帯、夫と妻の役割が逆転している世帯、
単身世帯、障害年金の受給世帯…と
本当に様々です。

そのような職業経験からつくづく思うのは
「人同士の単純な比較なんてとてもできない」
ということです。

例えばお金の話ですから、仮に
稼いでいる人が偉いとしましょうか。

ではその1点で見ればよく稼ぐ世帯主が偉いかもしれませんが
それほど稼いでない相方もお金では測れない
精神的価値を提供している可能性は十分にあります。

また単身世帯に関しては生涯未婚であれば
子を生む可能性も低くなり、杉田氏的な
「生産性の低さ」をもつ存在となります。

だからといって彼らが幸せを追求することを
妨げる理由にはならないはずです。

単身者は単身者で誰か別の人の
心の支えになっている可能性はありますし
「その方が自身は幸せだ」と感じるなら
それはむしろ追求すべきこととすら
言えるかもしれません。

だからもう、誰かと何か優劣を比較すること自体
ナンセンスだという結論に至る訳です。

そうした職業倫理がFPの根底にあるはずです。

我々FPは、個々人や個々のクライアントが
それぞれの価値観を元に幸せを追求することを
お金の面からアドバイスやサポートをする職業です。

そこに、

「誰それよりも優る/劣る」

とか

「誰かと比較して幸せ/不幸」

といった内容は微塵も入ってきません。

あくまでもクライアント自身の価値観を尊重し
それを伸ばすためのサポートをするのが
仕事なのです。

ですので当然、LGBTの人だからといって
依頼を断る理由にはなりません。

(ただし、専門分野が異なるからその相談には適切ではない
として他の専門家をご紹介することはあります)

FP協会の会員倫理規定には

顧客の最善の利益を追求しなければならない(中略)
専門家として業務を公平かつ道理にかなった方法で
提供しなければならない。

とあります。

そういう意味でFPはあくまで思想や価値観から
ニュートラルの立ち位置ですし、まして
思想を押し付けるようなことはしません。

なぜこのような立場をとるかというと
今まで説明したとおり、そうしないと
「個々人の幸せを追求できなくなる」
からです。

思想の自由との整合性は取れているか?

もちろん、日本は思想の自由も保障していますから
杉田氏のような人がいてはダメということではないです。

しかし思想の自由の権利を利用するならば
ご自身の思想を他人に押し付けるようなことも
してはダメでしょう。

押し付けた時点で他人の権利を制約することになり
ご自身も含めて自由を保障できなくなりますので。

となれば、思想の自由とは
違いを認めるということです。

LGBTは異なる人々の典型例ですが
その多様性を認めずに自らの主張を認めさせようとするのは
思想の自由に関して論理的に自己矛盾している
可能性があるわけですね。

個々人がこうした考えや思想を持つことは
違法でない限り制限を受けませんが
(それが思想の自由ですから)

国民の代表たる議員という立場で
矛盾とも取れる記事を寄稿したことで
批判を受けている面もあると思います。

世界的な流れのなかで特にLGBTに関しては
今は過渡期なんだと思います。

なので、こうした対立意見が出てくるのも
当然かとは思うのですがFPとしてはLGBTは
世界的に容認の流れにあり、個々の幸せを追求するという
FPの職業倫理的な観点でも容認していくのが必然だということは
覚えておいて損は無いと思います。

なお、繰り返しになりますが
個人としての思想や価値観と
FPの職業倫理は別に扱ってください。

例えばご自身はストレートで
LGBTではないとしますと
恋愛感情はストレートという価値観になります。

それはそれで全く問題ないことであり、それとは別に
ご自身とは違う(LGBTの)クライアントが来ても
職業としてそれは容認する(公平に接する)ということですね。

FPはお金の話がメインであり
思想や価値観からは切り離せるというのが
メリットの一つでもあります。

僕も仕事がしにくくなるのはイチ国民として
困りますので、今後の杉田氏の発言にも
注目していきたいと思います。

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