こんにちは。行列FPの林です。
政府のキャッシュレス・ビジョンでは、2025年にキャッシュレス比率を現在の20%から40%に上げる目標を掲げています。僕の生活実感としても、スマホのQRコード決済が町中でかなり使えるようになってきた印象で、キャッシュレスは今後も普及していくと思われます。
便利で快適なキャッシュレスと思われがちですが、デメリットもあります。FPはお金の専門家として利用者側に立つ側ですが、今後普及していくキャッシュレスのデメリットから顧客をできるだけ守る必要があります。
FPが備えておくべき視点について、お話します。
目次
本記事ではキャッシュレスのデメリットに焦点をあてますが、その前にメリットについても簡単に触れておきますね。
他にもメリットは思いつくかもしれませんが、ざっくりいえばこんな感じかと思われます。
では次にキャッシュレスのデメリットを見ていきます。行動経済学とフィンテックの観点でまとめ、それぞれのデメリットにFPがどのように寄与できるかを考えてみましょう。
まずは行動経済学視点で考えられるキャッシュレス決済のデメリットとFPが提供できる対策についてみていきましょう。
代表的なキャッシュレス決済であるクレジットカード等のポストペイ方式の場合、実際の引き落としは使った時点から1,2ヶ月程度未来になります。行動経済学でいう「現在バイアス」の影響により、現在(決済時点)の利得(商品をゲットするなどの利便性と喜び)が将来の痛み(引き落とし)よりも優先されがちです。そのため、将来の痛み(引き落とし)を軽視して使いすぎてしまうリスクがあります。一般にクレジットカードが使いすぎると言われる原因はここにあると考えます。当然クレジットカード以外のポストペイ型キャッシュレス決済でも同様の課題があります(もっといえば住宅ローンなども同じ理由で負債金額が大きくなりがちです)。
これに対してできることは、将来の痛みを可能な限り「今の痛み」として認識してもらうことです。クレジットカードの引き落としを前倒しにはできないため、「クラウド家計簿」などと連携して、利用額の進捗を随時把握してもらうのが効果的です。クラウド家計簿アプリには「予算管理」などの機能もありますので、そうした機能を顧客に紹介し、使い方をアドバイスするのもFPとして価値があります。
また、それでも使いすぎる傾向がある顧客へは、実際に家計簿アプリを一緒にレビューすることで「キャッシュレス決済の適切な使い方を習慣化する」手助けをしてもいいでしょう。
アンカリング効果とは最初に見た金額を「参照点」としてその差分で判断してしまう傾向のことです。
現金であれば、使うたびに財布の中の金額が「目に見えて」減っていきますので、自制心が働きます。一方でキャッシュレス決済の場合、この目に見えて減るという感覚を得にくい。にもかかわらず、今月の給与は30万円、などと給与日の金額だけが頭にあると、それがアンカーとなっていつまでもその金額が手元にあるかのように錯覚してしまいます。それが使いすぎにつながるリスクとなります。
対策としては現在バイアス同様、利用状況を随時確認する以外にありません。顧客に習慣づけてもらえるよう、FPとしては丁寧に対応したいところですね。
現金であれば紙幣と硬貨しかなく、それ以上の情報負荷はありません。一方キャッシュレス決済はその手段も多彩ですし、一つの決済手段に複数種類のマネーが存在することも。例えばQRコード決済大手のPayPayにはPayPayボーナスライト、PayPayボーナス、PayPayマネーライト、PayPayマネーの4種類が存在し、それぞれ利用条件が異なります。加えてクラウド家計簿を併用すると、さらに情報負荷が高まります。
人は情報が多すぎて「過剰な負荷」状態になると判断を誤ったり、判断できなくなったりします。日常的な支払いを行う際の「判断力の低下」は非常に危険ですね。選択肢が多いことや機能が豊富になるのは一見便利で有利になると思われがちですが、利用者にとっては過剰負荷というデメリットもあるのです。
対策としては情報を整理し、適切な判断力が戻るまではFP等の第三者サポートが有効と考えられます。特にクラウド家計簿を併用したキャッシュレス決済の運用は家計の合理化も含めて、トータルでサポートしていくことが大事だと思います。
次にフィンテックの視点でキャッシュレス決済のデメリットと対策について見ていきましょう。
フィンテックによる応用はさまざま考えられますが、消費者へのフィンテック応用の典型例としては「金融商品の自動提案」が考えられます。
キャッシュレス化するということは、個人の決済情報が大量に事業者に流れ込むことになります。この大量のデータをAIで処理し、個人の信用力を自動でスコア化してローンなどの金融商品を提案する、いわゆる「トランザクションレンディング」というビジネス手法があります。事業者にとっては信用力をデータから客観的かつ正確に把握した上で貸付できるので、貸し倒れリスクを減らせます。また人による営業を介さないので、営業コストも減らせます。一石二鳥で、美味しい商売なんですね。
そのビジネス自体が悪いわけではないですが、金融知識に乏しい消費者がセールスにさらされると「必要以上に金融商品を契約してしまう」リスクがあります。金融商品は嗜好品ではありませんので、本来は必要か不要かを合理的に判断して決める必要があるのですが、金融知識に乏しい場合は判断を誤ってしまうことがあるわけですね。
この問題への対策としては、事前に金融教育したり(いわゆるファイナンシャルリテラシーを高める)、あるいは金融商品を選択する場合は必ずFPに声掛けをお願いしておくなど、随時相談できる環境を提供することが考えられます。年間顧問契約や、サブスクによる金融サロン運営など、FPとしての腕の見せどころでもあるでしょう。
今後発展していくことが確実なキャッシュレス。メリットも多い反面、デメリットもあります。本記事では行動経済学とフィンテックの視点からデメリットと対策について考えてみました。
最後に要点をまとめておきますね。
キャッシュレスひとつとってみても、FPが提供できる価値はこのようにたくさんあります。キャッシュレス社会がよりよいものになるよう、同じFPとして頑張っていきましょう!
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