こんにちは。行列FPの林です。
コンサルタントとしてフィーを頂いて顧客の相談に乗りたい、と考えるFPは多いでしょう。その方向はもちろん間違っていません。
その場合、コンサル力をあげていく必要がありますが、コンサル力を上げるために「知識」と「声掛け力」が必要です。知識は分かると思いますが、声掛け力とはなんぞや?
それほど難しい話ではありません。短い記事なのですぐに理解できるはずです。この記事の目標は
です。では早速始めましょう。
目次
ここでいう声掛けとは、ヒアリングやコンサルティング中に交わす短い言葉のことで、顧客に対して「表のメッセージ」と「裏のメッセージ」の両方を伝える狙いがあります。
具体例は後ほどお伝えするとして、まずは声掛けの重要性について理解していきましょう。
FPは単にお金の知識をたくさんもっている人、ではありません。それを顧客に効果的に伝え、よりよい行動を促して初めてフィーをいただくFPとしての価値が生まれます。
顧客が行動を起こすには、今までとは異なる種類、異なる量の「心理的エネルギー」が必要です。これがなければ、顧客の心は従来のままそこにとどまってしまうでしょう。心理的な壁を超えるには心的エネルギーが必要です。
そのエネルギーを生み出すための声掛けです。この声掛けは相手を勇気づけ、「行動してもいいんだ」という気持ちになってもらう(勇気を持ってもらう)ために必要なことです。
とはいえ、顧客を動かしてやろう、利用してやろうという意図で声掛けするのは逆効果です。後ほど例で見ますが、FPは顧客よりお金の知識が豊富な分、無意識に「上下関係」でみてしまいがちです。上下関係を作ってしまうと、顧客は無意識に「私には能力がない」と自覚してしまいますから、これでは行動する勇気など生まれませんよね。
顧客の自立を促し、意識的に上下関係を作らない声掛けが必要です。
リーダーというと僕たちは「機関車のように後続を引っ張っていく人」をイメージしがちですが、それはリーダーの正しい姿ではありません。その構図だとどうしても上下関係が生まれ、顧客が主体的に動くことができなくなってしまいます。
それでも目的を達成できればそれでいいじゃないか、と思われるかもしれません。
ですが、顧客は自らの人生を死ぬまで面倒を見る必要があります。逆に僕らFPは寄り添うことはできても、100%面倒を見ることは到底できません。ですので、そもそも引っ張るという発想自体、おこがましいわけです。これはFPだけでなく、教師であれ他の専門家であれ、同じことです。
FPと顧客はあくまでも対等な関係でありながら、顧客が主体的に動けるよう、導いていく必要があります。
上下関係を作らないために「顧客を尊敬する」意識を持つことをお勧めします。知識の多い少ないだけで相手を上下方向にみるような態度は、真の専門家とは言えませんね。当たり前と言えば当たり前なんですが、忘れやすいところでもあるので、しっかりと意識しておきたいですね。
すこし抽象的な話になったので、具体例でみてみましょう。
顧客との対話の中で、なにかしらプラスの行動がとれたり、前向きな気持の変化が現れたりした場合に、それを褒めたくなることがあるかもしれません。ですが、それをほめるのは実はよくないのです。なぜなら「ほめる」行為は上下関係を作ろうとする「裏のメッセージ」があるからです。
ですので例えば、資産形成に向けて新しい銀行口座を開いたような場合、
新しく銀行口座を作って天引きを始めたのですね。提案した私としても嬉しく思います。
のような声掛けが適切です。逆に、
えらいですね!その調子でいきましょう。
のような声掛けは逆効果です。冒頭の「えらい」という表現が、顧客を評価していることに繋がるからです。これは勇気づけになりません。
顧客は評価されたいわけではなく、勇気づけられ、さらに行動を起こせるようになりたいと願っているはずですからね。
このようなほめたくなるようなシチュエーションでの声かけテンプレートとして
「事実」x「自分の気持ち」
で文章を作るとうまくいく場合が多いです。
ほめるとは逆に、それはよくないというNGを伝えたい場面もしばしばありますよね。そんなときも声掛けには注意が必要です。先程の例で、なかなか天引き用の銀行口座を開設できないような顧客に対して
天引き以外の方法では貯蓄がなかなか進まないことは、行動経済学の観点からもいえます。
と伝えれば、天引きの重要性を改めて理解してくれる可能性があります。逆に
それはダメですよ。貯蓄が一切できません。
のような声掛けはNG。なぜなら「ダメ」という言葉が相手を評価すると捉えられる可能性があるからです。
FP側の意図としては人格否定として「ダメ」と言っているわけではないですが、そのように受け止められるリスクがあるので、使わない方がベターだ、というわけです。
やはりダメならその理由を、客観的な事実を引き合いに出して相手に伝えるのが専門家としてベターな方法だと僕は思います。
また、ライフプランも「NG」を客観的に伝える手段として極めて有効です。「老後資産を作らないと大変になるよ」と100回繰り返すよりも、老後マイナスに沈む資産残高グラフをひと目見てもらうほうが説得力があります。
客観的事実が見える化されていると、さすがにそれを容易に否定できません。そこから、従来の思考が未来志向へ変化するキッカケが得られます。
だからこそ、ライフプランを「適当」に作るなど言語道断です。もちろんライフプランは未来の預言書ではありませんが、顧客への影響力が大きいのでしっかり作るべきなのは言うに及びません。
ライフプランの位置づけについてはこちらの記事で詳しくお話しています。
今回はコンパクトにほぼ結論のみで記事をまとめてみました。だからといって軽んじていいわけではなく、むしろ顧客を勇気づけ、モチベーションを引き出すためにとても重要な部分だといえます。
今回の話のベースに「アドラー心理学」があります。アドラー心理学では課題の分離や勇気づけなどの概念が出てきますが、こうした概念が結晶した形として「声掛け」に現れてきます。
なにげない声掛け。
でもそこにリーダーとしての本質が現れますので、ぜひ、意識して真に顧客を導く声掛けをしてみてくださいね。
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