こんにちは。行列FPの林です。
叱ってはいけないというのはよく耳にすると思いますが、褒めてはいけないとは一体どういうことでしょうか。FPは顧客を導き成長を促す存在ですから、この点についてはよりよく理解しておく必要があります。
理由を理解し、現場に活用することで、顧客を成功に導くFPになっていきましょう!
この記事を読むと
では早速始めましょう。
目次
FPが顧客へどう声掛けするか、結論を急ぐ前になぜ褒めても叱ってもいけないかの理解を深める必要があります。
ではまず分かりやすい「叱ってはいけない理由」から始めます。叱ってはいけないというのはよく耳にするのではないでしょうか。それには明確な理由があって
だからです。劣等コンプレックスは自分が相手より劣っていることへの恐怖感から生じますが、この恐怖から逃れるために「叱る」という行為を選択するわけです。
さてFPは顧客を導く、広い意味では教育者ですから、教育の現場を想定してみましょう。
例えば親が我が子を、教師が生徒を叱るという場面はよくあります。このようなことが生じるのは親が我が子より、教師が生徒より劣っている状況を恐怖に感じるからです。叱ることで親や教師の「優位性」を確保しようとする行為なんですね。
「だからといって全く叱らずに教育するのは無理ではないか?」というよくある反論がありますよね。ここには2つの誤りがあります。
一つは優位か劣位かは主観に依存していますので、そもそも誤解や誤謬から劣等コンプレックスが生じている可能性があるということです。それは親や教師自身の問題であり、子や生徒の問題ではありません。親や教師自身の問題を子や生徒に押し付けるのはナンセンスでしょう。自分の問題は自分で解決するしかありません。
もう一つは教育を効果的に進めるにあたって親や教師の優位性は不要だということです。仮に子や生徒が危険な行為や、やってはいけない行動をしたとしましょう。ですが、だからといって叱る必要はありません。教育者として、なぜいけないのかを理路整然と説明し、なぜそのような行為をしたかを問い、次にどうすべきかを共に導けばいい話なのです。そこに叱るという要素は一つも必要ありません。
叱ってごまかす親や教師は、やってはいけない行為に対して理路整然と説明ができないことを隠しているのかもしれません。もしそうなら、極端な言い方をすれば「恐怖で人民を支配する独裁」とその構造が同じです。したがって、叱ることをやめ、理路整然と説明できるかどうか確認することはとても大事なことです。
分かりやすく親や教師の例で説明しましたが、FPが顧客を導くのも本質的に同じであり、叱る必要は全くありません。
もちろん、FPの現場では叱るということはさすがにないと思いますが「それはダメです」とダメ出しをすることはあるかもしれません。しかしダメ出しも広い意味で「叱る」の範囲に入る可能性がありますので注意が必要です。
ダメとか悪いというのは主観や価値観の問題であり、FPが顧客に押し付けるものではありません。それを押し付けようとする時点で、劣等コンプレックスが生じている可能性があるのです。
ではどうすればいいかというと「事実」を見せて、顧客に判断してもらいます。詳しくは結論でまとめますね。
それから、どうしても叱ったりダメ出ししたりしがちということであれば、それは劣等コンプレックスが進んでいる可能性があります。それを解決する本質的な方法は「自らが成長する」しかありません。難しく考える必要はなく、日々成長するための努力を怠らなければ、叱ったりダメ出しする頻度は自然と減っていくでしょう。
それでもなかなかなおらない場合は、心理カウンセラーなどの専門家を頼るのもいいかもしれません。
叱ることの害を理解した次は、褒めることの害について学びましょう。
叱ってはいけないというのはよくある話なのでもう理解しているかもしれませんが、褒めてもいけないというのは聞き慣れないと思います。一体、どういうことなのでしょうか。
褒めてはいけない理由は一見分かりにくいですが実は明確で、褒められた側が、自分には価値がない(劣等である)と感じてしまうからです。これは事例で考えればよく分かります。
例えばここに先生と生徒がいるとしましょう。教師が生徒を褒める場面はよくあります。しかし生徒が教師を褒めることはないのではないでしょうか。これは論理的におかしな話です。なにか良いことや素晴らしいことをした場合に褒めるわけですが、生徒より能力の高い先生は、生徒よりも頻繁に褒められてもいいはずです。にもかかわらずなぜ褒められないのでしょう。
理由はそこに「優劣」の関係があるからです。この場合、先生が優で生徒が劣です。褒めるというのはつまり、この優劣関係を確認し、強化する行為なのです。このように理解すれば、生徒が先生を褒めない(褒めることができない)理由は明らかでしょう。そんなことをしたら生徒が先生に「バカにするな」と叱られてしまう可能性だってあります。苦笑
したがって褒めれば褒めるほど、褒められた側は「劣っている」と感じてしまい、行動する勇気が持てなくなってしまいます。ですから、叱ってはいけないのと同様に、褒めてもいけないのです。
とはいえ、FPとしては顧客が良い行動を取ったり、なにか成長を感じることがあれば、それに同意し、より強化して欲しいと思う場面は多々あります。これを褒めずに行うのはなかなか骨が折れるのは僕も現場でしばしば経験することです。ちょっとテクニック的な話になりますが、僕はよく「素晴らしいです!」という言葉を使います。
ただしこの「素晴らしい」という言葉も相手によっては褒め言葉と受け止められる可能性があり、注意を要します。結論でまとめますが、最もいいのは「ありがとう」と感謝の言葉をかけることです。
なお、褒めるという行為が「優越コンプレックス」から生じている可能性があることにも注意してください。褒めて伸ばそうという言葉があるぐらいですから、ほぼ無意識に褒めている人もいるかもしれません。その場合は単に行動を改めればいいだけですが、背後に優越コンプレックスがある場合は少々厄介です。
劣等コンプレックスも優越コンプレックスも、その人自身の問題であり、それを教育や他者との関係に持ち込む必要は全くありません。結局、叱る必要も褒める必要も全くなく、むしろ相手の成長を促すためには叱っても褒めてもいけないということです。
以上、叱ったり褒めたりすることが優劣から生ずるコンプレックスに基づく可能性について述べましたが、ではコンプレックスがあると分かったらどうすればいいのでしょうか。本質的には「FP自身が成長していく」しかありません。
そして心的成長にはマインドセットの理解が欠かせません。成長型のマインドセットについてはこちらの記事も参考にしてください。
以上で叱る必要も褒める必要もないことが理解できたと思いますが、ではFPの現場で顧客の成長を導くためには一体どう対処すればいいのでしょうか。
アドラー心理学と僕の経験を踏まえて、結論してみましょう。
叱る必要がないことは理解できたと思いますが、さりとて顧客に課題がある場合はそれを指摘すべきなのはプロとして当然のことです。
FPが顧客の課題を指摘する場合は、数字に裏付けられた客観的な事実、あるいは明確な前提に基づく予測を活用しましょう。お金に関するツールは様々あり、家計簿であったり住宅ローンシミュレーションであったりしますが、最も基本的かつ活用の幅が広いツールはライフプランでしょう。
ライフプランを作成し、客観的事実や明確な前提条件に基づく予測シミュレーションを顧客に提示することで、叱る必要など全くなく顧客に課題を認識してもらうことが可能になります。ライフプランはFPにとって顧客を導く強力なツールだと言えるでしょう。
だからこそ、ライフプランは丁寧に、慎重に作る必要があります。予測シミュレーションはどこまでいっても予測でしかありませんが、その前提条件づくりは詳細まで顧客とすり合わせ、納得のいくものにする必要があります。
ヒアリングが大事なのはこのような理由によります。
褒めるに代わって活用したいのが「ありがとう」に代表される感謝の言葉です。
アドラー心理学では「ありがとう」や「感謝」という言葉がキーワードとして頻繁に出てくるのですが、岸見先生の書籍によると「ありがとう」の声掛けが相手の「貢献感」を高め、結果として行動する勇気を与えることができる、と説明されています。
「貢献感」も専門用語に近いですが、人が幸福感を高める根源として「コミュニティへの貢献」があり、「ありがとう」の言葉こそ、そのコミュニティからのフィードバックである…。そしてそのフィードバックをもらったときに幸福感が上昇する、という考え方ですね。
この場合のコミュニティは広い意味で使われており、友人や家族、地域のコミュニティまで大小様々。僕個人の解釈では、人間関係を生じる全てのグループを指しているのではと思っています。であればFPと顧客の関係もコミュニティとして扱っていいかもしれません。
前置きが長くなりましたが、ありがとう等の感謝の言葉をかけることにより、顧客の貢献感が上がり、勇気を与え、結果として良い行動が促進される、と理解してください。具体的な活用例をいくつか示しますね。
あなたと顧客の信頼関係は既にできているはずで、信頼しているFPからこのような言葉が返ってくれば顧客は嬉しいはずですし、勇気も湧くことでしょう。結果として、よりよい行動につながるはずです。
FPは心理的側面にも注意を払い、顧客を成功に導いていきましょう!
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