こんにちは。行列FPの林です。
令和の時代が始まったというのに、まだこんなお寒い状況なのかと思い知らされる衝撃的な記事を見つけました。
銀行の過剰なノルマは今も現場、特に若い行員のやる気と能力を奪い続けているようです。
ではこのような状況に、個人としてなす術はあるのでしょうか?
目次
先日、毎日新聞の経済プレミアというサイトに以下のような記事が掲載されていました。
詳しくは記事をご覧いただきたいのですが要約すると
ここに日本の銀行界の「暗部」が凝縮されているように見えます。
もちろん販売数量2.4倍と言っても実現可能な射程圏内に入っているならば特に問題ないと言えるでしょう。
しかしどれだけ楽観的にみてもこの数字には無理があります。
まず銀行の外貨建て保険の販売は窓販や訪問販売がメインです。 となると2.4倍という数字を達成しようとすると窓販であればまず来客数、訪問販売であれば訪問数を飛躍的に高めないといけません。
ですが窓販の場合、支店への来客数が母数となりますが、これは近年減少傾向。ちなみに銀行は今後支店数を統廃合して減らす方向だというのはご存知の通り。 仮に今後来店客数が増えるか減るかが分からないとしても、これはあなた自身の努力でどうこうできる数字ではありませんよね。
では訪問数はどうかというと、こちらも時間や距離などの物理的な制約を受けるため、(残業などで)多少の改善はできたとしても、訪問数を飛躍的に向上させるというのはまず現実的ではないでしょう。それこそ現場(あなた)が疲弊するだけです。
となるともう一つの改善代である成約率と契約金額を飛躍的に高める必要があります。 これについては現場のイノベーションが起きることである程度の改善は期待できます。とはいえ減少傾向である来客数が、楽観的に見て現状維持できたとしても、ノルマ達成には成約率x契約金額を2.4倍に高める必要があります。
もし組織的なサポートがないなら、個人の努力で成約率を上げるしかありませんが、当然ながら限界があります。よくできる人や、たまたま上手くいった人は成約率が上がりますがそうでない人もたくさんいるでしょう。どれだけ優秀な支店であっても、成約率x契約金額を現場の努力だけで2.4倍に高めるのは至難の技です。
となると結局は銀行全体としてのノルマ達成も危うい限りです。
もちろんオンラインでの直販を増やすという方法も考えられますが、これは現場に落とすノルマというよりは銀行全体で取り組むべき課題です。
ここまで考察してみて、やはり記事に書いてある通り上層部は何も考えずに単純な発想で現場にノルマを課しているだけと考えて間違いなさそうです。
この記事だけで銀行全体を批判するのはもちろん行き過ぎだということはわかっています。
しかし、もう令和の時代に入ったというのに、「上意下達」という、70年以上前の大本営時代を思わせるような古い体質や価値観を引きずっている事実があること自体、大きな大きな違和感を覚えます。
それだけ古い体質が今だにまかり通っているということは、もしかしたら令和の時代も銀行の体質はずっとこのままかもしれません。つまり銀行の体質は、ここ70年間ずっと変わっていないし、今後も変わらない可能性があります。
さてここで身も蓋もないことを言ってしまいましょう。
こうした古い体質は、若いあなたが組織に働きかけて変えられるようなものではありません。
それもそうでしょう。現場の努力で変われるなら、とっくに変わっているはずですが、もう70年間変わっていません。
「 組織変革が重要だと言われているじゃないですか!」
と反論されるかもしれませんが、組織が変わる最も可能性の高いタイミングというのは幹部自身が危機感を「自分事」ととらえた時です。しかしこの記事からは幹部自身に危機感があるように少なくとも僕には見えません。その証拠に、課題を全て現場に押し付けています。
ですのでいくらあなたが上司に訴えたところでおそらく状況は何も変わらないことでしょう。理解のある上司であれば多少のサポートがあったり、労いの言葉をかけてくれるかもしれませんが。
本質的には何も変わらないのです。
だとすれば「あなた」はどうすべきなのでしょうか。
これはあなたがどうしたいのかということに強く依存しているのですが、
行員でありたいと思うなら、どんなに過剰なノルマを課されたとしても、どんな仕打ちを受けたとしても、銀行に止まることが第一の選択肢になります。 この場合は他の銀行に転職する、ないしは銀行内の別の部署に異動するという選択肢はあります。ただし、そうした選択肢があるにせよ銀行全体の体質から逃れることはできないでしょう。それでも行員であることに幸せを感じるのであればそれも選択肢のひとつです。
一方で組織を通じて社会に価値提供をしたいと考えている場合はどうでしょうか。 この場合必ずしも銀行員である必要はありません。銀行員であった方が社会に価値を提供できる、貢献できると判断すれば銀行員であり続ければいいですし、そうでないと感じるなら全く別の働き方を選択してもいいわけです。
このように銀行員という限られたコミュニティから社会全体という、より大きなコミュニティに目を向けることで選択肢が大幅に広がり、目の前が広がる感覚を得ることができます。
アドラー心理学で有名なアルフレッド・アドラーは「共同体感覚」を提唱しています。共同体感覚とはざっくり言うと人が共同体(コミュニティと言い換えてもいいかもしれません)に貢献できていると実感している時に人は幸せを感じるということです。ここで重要なポイントは、あなたがコミュニティを選択できるということです。
今、あなたが行員であることに幸福感を感じていないのであれば銀行というコミュニティから脱出してもいいですし、別のコミュニティを掛け持ちして精神の安定を図るということも有効な手段だとアドラーは言います。
つまりどう頑張っても銀行が変わらないのであれば、あなた自身の考え方を変え、銀行以外の別のコミュニティを選択したほうがいいのです。また社会全体から見てもその方が有意義でしょう。
過剰なノルマであなたが疲弊することに、何の価値もありませんから。
そうやって無理やり売った外貨建て保険が顧客にとって必要のない商品だとしたら、あなたはあなたのためでも、顧客のためでもなく、ただ銀行の上層部のためだけに存在する「奴隷」ということになってしまいます。
社畜という言葉がありますが、これは上記のような事実から生まれた言葉でしょう。
※アドラー心理学については、こちらの入門書がお勧めです。
僕は銀行員の方から「 FPとして独立するにはどうしたらいいでしょうか」と相談されることがしばしばあります。毎回、非常に切実な相談です。
もちろん独立を目指すこと自体は大変意識の高い目標ですので、僕としても精一杯応援したいところではあります。しかし一口に独立すると言っても手続きをすればそれで終わりといった簡単な話ではありませんし、独立後も自分を磨くための最低限の努力は続ける必要があります。
いきなり壮大なことを目指すよりは、現在の銀行員という立場を活かしながら副業、複業できる方法がないか模索した方が第一歩として賢明と言えるでしょう。副業といっても馬鹿にはできず、規模が大きくなってきて結局独立に至ったという話はいくらでもありますから、副業は最終的に独立を目指す場合の登竜門としてもお勧めです。
もしかしてあなた自身は気付いてないかもしれませんが、 銀行員というのはそれだけで非常に高いスキルを持ち金融知識も豊富です。ですのでそうしたスキルや知識を活かして社会に価値を与えることは比較的簡単なのです。
例えば FP 協会にも銀行員の方がいらっしゃいます。まずはできるところから始めてみてはいかがでしょうか。
副業や複業は手軽に始められるので、まずはすぐに始めていただいたらいいと思います。ただその場合でも「副業の先」というのを意識しておくことで、より有意義な活動になります。
例えば副業の先が「転職」であれば転職先で役に立つスキルを身につけるための副業を選択すればいいのです。
また副業の先が「独立」であれば、そもそも独立したらどういったビジネスをしたいかということを考え、その中で副業からできるものを選択していきましょう。
FP として独立したいのであればやはり「相談業務」がビジネスのひとつの柱になりますので、副業でもできる相談業務というのをじっくりと考えてみてください。
どの方向を目指すにしても役に立つポイントは
手に職をつけるというのは何も資格を取るということだけではありません。 資格がなくてもできるコーチやコンサルティング、セラピストなどいくらでもありますので、あなたがやりたいと思うこと、社会に価値提供ができると思うことを存分にやればいいだけの話です。
また、銀行員であればいろいろな資格は既に取得している(させられている)はずです。それらの資格の知識を銀行内だけでなく、広く社会に役立てるのは効率的かつ有意義なことです。
集客スキルというのはもう何度もこのブログでも言ってますのでここでわざわざ詳しくお話はしませんが、独立するならもちろん、将来独立を視野にした副業を始めるにしても集客スキルが重要になっていきます。
例えばこちらのような記事も参考にしてください。当ブログの人気記事の一つです。
なお集客スキルがあれば、どんな組織にも縛られず、あなたの理想的なコミュニティをあなた自身でデザインできます。 あなたがそのコミュニティの長(おさ)となり、思う存分コミュニティに価値提供することでアドラーが言うところの「幸せ」を理想的な形で手に入れることができます。
当たり前ですが、努力は必要です。 幸せになるために努力は必要ないなんて、頭がまるでお花畑のようなイタイ発想はさすがにしないでくださいね。
ですが毎日過剰なノルマに苦しめられ、心身ともに削られ続け、うつ病や自殺のリスクを日々高めていく状況に比べれば、独立するための努力なんて大したことでもないでしょう。 実際、僕のクライアントで元銀行員の方がおられますが、今は誰にも頼らず収入が得られるまでに成長しており、毎日生き生きとされています。
そういう意味で独立するというのは「究極の幸せ」を手に入れることです。
僕が独立を目指したのも、そして努力して今こうして独立しているのも、つまりはその目的のためです。自らの幸せを最大化でき、かつコミュニティに価値提供もできるのですから、これ以上理想的な状況はありません。
(僕の前職は銀行ではありませんでしたので、過剰なノルマはありませんでした。しかし僕が幸せを強く望む欲求は、やはり僕に独立を選択させたのでした。)
もちろん僕のコミュニティもまだまだ小さいですから、コミュニティを大きくしていく努力は引き続き必要ですし、僕が提供している価値もまだまだ大きくしていくことができるでしょう。
そういった意味でまだ発展途上ではあるんですが、 それは僕と僕のコミュニティがより大きな幸せに向かっていくための「旅」であり、これ以上ワクワクする、楽しいことも他になかなかみあたりません。
なるほど、アドラーが言っていたのはこういうことなのかと、最近改めて実感しているところです。
ということで、僕が今後、何か他の組織に所属する可能性はほとんどありません。今最高に幸せを感じているというのに、わざわざ不幸になりにいく理由なんてどこにあるのでしょうか?
令和の時代にあって今だに現場に過剰なノルマを押し付けているのかと思うと惨憺(さんたん)たる気持ちになってきますが、残念ながらその状況をあなただけの力で変えることは不可能に近いでしょう。
であればあなた自身の考え方を変えていくしかありません。
詳しくは上記で述べましたので詳しくは省略しますが、あなたは今、岐路に立っていて
最後はこの言葉で締めくくります。
自分が自分のために自分の人生を生きていないのであれば、いったい誰が自分のために生きてくれるだろうか
(ユダヤ教の教え)
誰かのためではなく、あなた自身のために勇気を出してください。
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