こんにちは。行列FPの林です。
FPはライフプランを作成し、顧客に価値を提供するのが本業です。ライフプラン=人生計画ですが、人生という言葉が入っているからには、人生とはなにか、生きるとは何かということへの理解なくして良いライフプランは作れません。
人生が何かを理解もせずに、人生計画を作るお手伝いなどできようはずもありません。
ということで、ここでは人生の多くの時間を費やしている「仕事」「働く」という行為を題材に、人生への理解を深めてみたいと思います。哲学者の岸見一郎先生の手助けを頼りに、一緒に思考を進めていきましょう。
目次
まずはこちらの一文をご覧ください。
働くことも生きることなのですから「何のために働くのか」という問いへの答えは「何のために生きるのか」という問いへの答えと同じでなければなりません。
「ほめるのをやめよう リーダーシップの誤解」(岸見一郎)より
これは岸見一郎先生の書籍「ほめるのをやめよう」から引用した一文です。この一文を読んだとき僕はショックを受けたのですが(苦笑)、働くということも生きることの一部であり、何のために働くかは何のために生きるかという問いへの答えと同じでないといけない。
理屈で考えれば確かにそうです。この論理展開に矛盾は一切なく、美しくすら感じられます。と同時に、とても厳しい問いだなと思い知らされました。何のために生きるのか、という問いへの答えがない限り、何のために働くか、という問いにも答えられないからです。
僕らは何のために働くかと問われたら、つい「お金のため」とか「食べていくため」と答えがちです。ではそれが何のために生きるのかの答えと同じかというと、決して違いますよね。お金のために生きているとか、食べるために生きている、という人はいないか、いても少ないはずです。だから僕たちは普段、何のために働くかと問われたときにお金のためとか食べるためとかいう答えらしきものでごまかしているわけです。
でも岸見先生はそれではダメだ。ごまかしてはいけない、と率直に(やや剛速球気味に)我々に問うわけです。
「あなたは何のために生きているのか」
と。
しかし岸見先生は、救いの手も差し伸べてくれています(さすが優しいです!)。何のために生きるかというと、それは幸せを追求するためだと。
確かに、おっしゃるとおりなのです。何のために生きるかと問われたら、幸せを追求するために生きているのだと。
何のために働くかという問いへの答えが、仮に「収入を得るため」だとすれば、収入を得ることが幸せに直結しなければなりません。では、収入さえあれば、人は幸せになれるのでしょうか。
この深い問いに、有名なデータと哲学的結論から向き合ってみます。
年収が幸福度に直結するかどうか、という有名な研究がありますので、ここに引用しておきます。
最も幸福度が高い年収はいくら?ノーベル賞学者の研究結果(MONEY PLUS)
概ね、世帯年収300万円から500万円ぐらいで満足度が頭打ち傾向になり、その後の満足度の伸びは年収の伸びに比べて緩やかになります。この研究を信じるなら、今不満があるからといって高い年収を目指したとしても、途中で満足度の向上が鈍化あるいは止まってしまって、目的が達成できない可能性が高いことを示しています。
もちろんこのデータ一つをもって「収入はオワコンだ」などと言い放つつもりはありません。収入を増やすことが楽しくて楽しくて仕方のない人もいるでしょう。500万円から頭打ちするということは逆を言えばそれまでは収入を増やすことが幸福感に直結しているとも言えます。収入はいくらあっても困ることはありませんから、無理な残業をするなど自分の幸福感を下げない限り、収入を増やすこと自体悪いことではありません。
しかし一方で、昭和時代、高度経済成長時代にあった給料右肩上がりなら皆幸せ、みたいな「単一的」で「楽観的な」状況ではないということもまた事実です。収入を高めるということだけでは、何のために働くか、という問いへの答えとしてもはや不完全なのです。
これは特に資産運用系のFPは押さえておきたいところです。とかく収入を増やしましょう、資産を増やしましょう、それが幸せに直結します!的な方向付けでアドバイスをしがちですが、人生の幸福感とは直接関わりないところがあるからです。
年収1000万円や2000万円など、高い年収を目指しても満足度が向上しない、つまり幸せ感が高まらないとしたら、一体どうすればいいんでしょうか。
これはもうド直球ですが、幸せ度の向上を目指すしかありません。
では幸せとはなんぞや?という哲学的問いにたどり着くわけですが、個人心理学者のアドラーは「幸福感は(コミュニティへの)貢献感から得られる」と結論付けています。
幸福「感」とか貢献「感」とか、主観に依存する言葉が入っていますので客観論ではないかもしれません。が、幸福に関する様々な説や考えがあるなかで、シンプルかつ理解しやすい形で提示されていると僕は思っています。
確かに、誰ひとり居ない砂漠で、たくさんのモノに囲まれて暮らしても幸福感は上がらないでしょう。逆に、モノなんて一つもなくても、居場所があるコミュニティ内で生きていくことで幸福感が得られやすい。というのは直感的に理解できますね。
もちろん貢献感などというのは一言で理解できる概念でもないですが、ひとまず僕のつたない頭で理解できるレベルで論を進めてみたいと思います。
なお、ここでいうコミュニティとは、仕事上の関係(顧客との関係)も含む広い意味だと考えてください。
ちょっと抽象的な話になってしまったので、もう少し具体的な話として、FPとしての仕事の幸せについて考察してみたいと思います。
比較対象があるとわかりやすいので、FPの仕事の幸せを見る前に、大企業社員の幸福感について考察してみましょう。
先程、人生の幸福感は貢献感からもたらされる、というアドラーの結論を紹介しました。この視点に立脚して話を進める場合、大企業の社員として得られる幸福感は果たして大きいのでしょうか。それとも小さいのでしょうか。
もちろん貢献感の感じ方は人それぞれであり、一概には決められません。それを承知の上で、僕が大企業に15年勤めた経験からお話すると、貢献感を感じにくい点があるのは否めません。なお、この話は僕が研究開発部門にいたから、という可能性もあることは付け加えておきます。
大企業に勤めていると、一つの製品を完成させ、それを顧客に販売して売上を上げるまでに非常に多くの人と部署が関与することになります。もちろん関与する全ての人がその製品や売上に多かれ少なかれ貢献しているはずですが、一つの結果(製品完成や売上)に大勢が関与していることから、自分自身が感じる貢献感は相対的に小さくなります。したがって貢献感を感じにくい、イコール、幸福感も感じにくい、と言えるかもしれません。
なお、これはリーダーの資質にも大いに依存していると思われます。会社という組織に所属する一員として、最も身近に感じるコミュニティは「あなたが所属する部署やグループ」でしょう。ですので、この部署やグループへの貢献感が幸福感に直結することが多いわけです。
そのグループの長がリーダーですが、リーダーから事あるごとにありがとうと感謝の言葉をかけられれば貢献感は非常に高まり、結果として幸福感も高まります。逆に、仕事をして当たり前みたいな態度で接するリーダーであれば、社員の貢献感は高まらず、幸福感も下がっていくでしょう。幸福感は仕事のモチベーションにも直結しますから、組織のパフォーマンスを高める責任を持つリーダーの役割は極めて大きいと言えます。
これが大企業における貢献感、幸福感のいち側面だと考えます。
では対照に個人が行うFP業務を見てみると、直接顧客と面談し、コンサルティングを行う業務になりますから、貢献感は得やすいと言えるでしょう。直接お客さんからよい評価を頂ければ、それが貢献感、幸福感に直結するわけです。
ただしFP業務も注意が必要です。
もしあなたが顧客の利益に相反する商品を(ノルマ達成のために)顧客に売ったとします。仮に顧客から感謝されたとしても、あなたの心は晴れませんし、幸福感も生まれにくい。なぜなら、あなた自身が顧客に貢献したと思えないからです。貢献感とはあなたの主観と相手からの反応(客観)とが合わさったものです。
つまり、利益相反はあなたの幸福感を下げていく大きな原因の一つです。幸福感が下がっていくこと自体、人生の目的から外れることはもうここまでお読みならお分かりですね。さらに言うと、幸福感が下がると勇気が失われていきます。勇気が失われると、仕事を続ける気力も失いますから、最終的に「離職」に繋がります。保険業界の離職率が高い要因は、こうしたメンタルの背景があるものと思われます。
このように、利益相反があなたにとっても、会社にとっても、社会にとっても、有害であることは間違いありません。FP業務は幸福感を得やすい業務ではあるものの、こうした「落とし穴」があることは常に気をつけたいところですね。
やや抽象的なテーマで僕にとってチャレンジでしたが、なんとか理解いただけましたでしょうか。まとめると
結論として貢献感が高まる仕事をしましょう。幸福感が高まる仕事にしましょう。生きるとは幸福を追求することであり、幸福感が高まる仕事は生きることに直結します。
FPであれば、利益相反に気をつけながらコンサルティング業務を行えば幸福感を得やすいですので、ぜひ目指してくださいね。
今は上司からのノルマ爆弾に悩み、利益相反だらけの職場に苦しんでいようが…大丈夫です。ご自身にとっての幸福とは何かを考え、少しずつでいいので、前進していきましょう。
この記事が人生を理解する一助になれば嬉しいです!
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