起業のための早期退職にメリットはあるの?

こんにちは、行列FPの林です。

早期退職制度を設ける会社が増えてきています。それに伴い、早期退職では退職金の増額が見込めるため、制度を利用して起業しようとする人も増えてきています。

増額した退職金は開業資金にまわせます。設備投資や広告費に多く資金を使えることは大きなメリットです。

しかし、ニュース記事などでは、早期退職をしたことで安定収入がなくなり生活が苦しくなったというケースが多く取り上げられています。

そのため、「早期退職=危険」という考えが広まってきていますが、これはかなり偏った考え方です。

この記事では、起業のために早期退職を選ぶことのメリット、デメリットを具体的なライフプランの設計をしながら説明していきます。

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目次

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ライフプランで早期退職の損得を考えよう(一応、ね)

人生をお金の損得だけで考えることには問題もあります。しかし、お金が足りなくなってはせっかくの人生も楽しめませんので、まずは基本の損得を具体的なライフプランで見ておきましょう。

まず、早期退職のタイミングとして、45歳、50歳、55歳の3パターンで考えます。

年収を「年齢×10万円」、退職金を「年齢×15万円」、早期退職による退職金割増分を「年齢×20万円」と仮定します。金額は会社や勤続年数により違いが出てくるので、ここでは相場から大きく外れないような金額を設定しました。

45歳で早期退職を行うと割増分を合わせた退職金の総額が1,575万円であり、46歳から定年(60歳)まで働いた場合の給与と定年時の退職金の合計額が8,235万円となります。

同様に、50歳の早期退職で受け取れる金額は1,750万円、51歳から60歳まで働いた場合の給与と退職金の合計額が5,835万円となり、55歳の早期退職で受け取れる金額は1750万円、51歳から60歳まで働いた場合の給与と退職金の合計額が5,835万円となります。

さらに、定年退職までの給与と退職金の合計から、早期退職時に受け取る割増分を含んだ退職金を引き、それを定年までの残り年数で割ると1年当たりの差額がわかります。

【テストケースにおける早期退職と定年退職の比較表】

早期退職を行う年齢早期退職の 退職金定年退職の 給与・退職金定年退職受取額- 早期退職受取額1年当たりの 差額
45歳1,575万円8,250万円6,675万円445万円
50歳1,750万円5,850万円4,100万円410万円
55歳1,925万円3,200万円1,275万円255万円

なお比較が複雑になりすぎるので税金については無視しています。

単純にお金の面だけを比較するのであれば、この差額以上を起業により稼ぐことができれば定年まで勤めることと比べ損にはなりません。

ただ実際には、お金の面だけではなく、労力や時間、精神的な満足度など他の要素も含まれるため、収入が減っても全体的な満足度が上がることは十分に考えられます

また、上記で設定した数字はあくまで仮定のものです。例えば勤続年数が短くなれば退職金が減り、相対的に退職金割増分の割合が増えるなど、人により違いが出るので数値は自身のものに置き換えてみてください。

早期退職を行うと給与が当然なくなります。この状態が続けば生活資金が無くなりライフプランは破綻します。ネット上にあふれる「早期退職=危険」という考え方は起業や転職などをせず十分な収入を得られないことが前提となっています。

早期退職が危険かどうかは、起業によって利益が得られるかどうかによることは言うまでもありません。大事なのは起業内容のブラッシュアップと軌道に乗せるまでの時間を短縮することです。

退職年齢とライフプランについて詳しくはこちらの記事も参考にしてください。

起業に必要な金額が大きすぎる場合

ライフプランシミュレーションで生活に必要なお金が多くかかる、起業に必要なコストが高額になるなどが判明した場合、必要な金額が大きすぎる場合には、早期退職にこだわる必要はありません

この場合は定年退職後の起業・開業を目指すのもひとつの手です。なお、この場合でも、定年退職時に起業の準備を行うのではなく、早期退職をした仮定で早めに取り組むことで、より起業を成功させやすくなります。

開業方法、経営ノウハウ、マーケティング、広告など、起業に役立つ知識は数多くあり、予想以上に時間がかかってしまうことは十分にあり得ます。

予想以上に助走期間が長くなってしまっても、早期退職をしたつもりで準備を始めれば退職時間に合わせることができます。

起業、開業前提なら早期退職にもメリットがある

起業、開業をする前提であれば、早期退職による退職金の割増は大きなメリットになります。

起業には初期投資や事務所家賃などのランニングコストがかかるため、開業資金を準備する必要があり、その資金集めは大変ですが、割増退職金があれば大きな助けとなります。

もし早期退職制度が無いとしたら、退職金の割増が無くなり、その分金融機関からの融資がより多く必要になるなど、開業資金の準備がより大変になります。

それから、前章で説明したように早期退職時期によって、早期退職で受け取れる金額と定年退職までに受け取れる金額には大きな差があります。

生活の質を維持したいのであれば、この差額以上に利益をあげなければなりません。

あなたが取り組みたい事業の予測利益と比較して、差額の方が大きければ、早期退職のタイミングを未来にずらすなどの対応が必要になります。

独立起業を検討する場合は、そのリスクにも目を向る必要があります。こちらの記事も参考にしてください。

起業・開業には助走期間が必要

起業、開業を行う際に注意しなければいけないのは、事業を始めてすぐに売上は発生しないということです。

例えば、飲食店を開く場合、店舗を構え、宣伝活動を行い、客入りが安定するまでは赤字が続きます。

赤字期間が長く続くほど、蓄えが無くなる、借金が増えるなど、起業に失敗する可能性は高まります。

これを防ぐためには、早期退職前から準備を始めることをお勧めします。できれば事業計画を立てるだけでなく、副業として取り組んでおくべきです。そうすれば、具体的な費用や売り上げがわかるので、損益分岐点の予測精度を高めることができます。

副業が安定すれば、あとどれくらいの期間で収入が安定しそうか予測できるため、精神的にもゆとりを持って退職することができるでしょう。

ただし、まだまだ副業が禁止されている会社も多くあります。その場合には、事業計画を退職前までにまとめ、早期退職で得られる退職金の割増分を初期投資や当面の生活費に割り当てるという選択肢もあります。

ちなみに、退職金を多くもらうことで安心してしまい、退職してからしばらく何もしない期間が続く人が少なくありません。そうすると起業により利益を出せるまでの期間がその分延びてしまいます。これを防ぐためにも退職前にきちんと準備をしておきましょう。

まとめ

早期退職に関する記事はネガティブなものが多く見られます。その内容は、退職後に起業や転職がうまくいかず、収入が大きく減ってしまったというものばかりです。

しかし、この問題は早期退職を行うかどうかによるものではなく、退職前に起業・転職の準備ができていなかったことによるものです。

起業・開業する前提であれば、早期退職による退職金の割増分を開業資金や当面の生活費に当てることができ、アドバンテージになります。これは大きなメリットです。

重要なのは退職前にきちんと事業計画を立て、シミュレーションを行い、退職後に自信を持って起業できる状態を作ることです。在職中に副業として取り組むことができればより良いです。

早期退職による退職金割増は大きなメリットになりますので、制度の活用を検討してみてください。

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