保険代理店の社長、もしくは社員の年収はどれぐらいなのでしょうか。
実際には個別のばらつきが大きく、一概に年収いくらとはいえないものの、指針となる考え方を探ってみました。
目次
年収の統計値を知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。
この中の、「金融商品を販売・仲介する独立系FPの年収」項目が保険代理店の年収に近いと考えられます。
さて、一口に保険代理店の年収といっても、社長(経営者)と社員、の2つの年収があります。
保険代理店業界は歩合制の色合いが強いため、社長も従業員も成績が良ければ年収も高く、悪ければ低いということになりがちです。
ただし、2016年の保険業法改正により、代理店がかかえる保険募集人は、雇用することとなりました。
以下、社員(従業員)、社長それぞれの立場に立って、具体的に見ていきましょう。
年収がどれぐらいの金額になるかは代理店の給与体系とあなたの成績次第かと思いますが、必ずチェックしていただきたいのが「労基法」です。
現在の保険代理店は保険募集人を雇用しなければならないため、仮に歩合制といっても従業員は労基法に守られる存在となり、最低賃金、通勤手当や出張旅費など会社として当然支給すべき経費の支給、その他有給等の権利が得られます。
でなければ、きちんと雇用されているとはいえません。
例えばこちらを確認してみましょう。
保険代理店は歩合給制が多いと思いますので、このページの下2つ、「歩合給制の場合の換算方法」を参考にしながら、最低賃金を下回らないかどうかを確認してください。
逆に言えば、保険代理店社員の年収は、正しく雇用している代理店であれば、どんなに成績が悪くても最低賃金を下回ることはないということです。
でもまぁ、だからといって努力をしなければ、代理店内の地位も悪くなるでしょうし、解雇理由に該当してしまうこともあるでしょう。
そもそもバイト代ぐらいもらったところで、生活は苦しいままでしょうしね。
次に確認してほしいのが「社会保険料」です。
社会保険料は「健康保険料」「厚生年金保険料」「雇用保険料」「労災保険料」の4つからなりますが、額が大きいのが健康保険料と厚生年金保険料です。
ご存知とは思いますが、健康保険料と厚生年金保険料は労使で折半して負担します。
折半割合などの細かい話は省略して、共に半々折半だとすると、給与天引きされるのはこれら保険料の半額となります。
もし社長から、「会社としてはあなたがたの営業収保からまかなっているので、実質的には給与から全額天引きします」と言われたら、アレ?っと思ってください。
この場合、本来半額は会社負担のはずですので、社会保険料の半額を先程の総支給額からさらに減らして、最低賃金を下回っていないかを確認しましょう。
これがもし最低賃金を下回っていたら、労基法違反の可能性が濃厚です。
その他「事務所管理費」などの名目で、給与から実質天引きされているような費用がある場合も注意が必要です。
労基法第24条の1は、以下のように定めています。
賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない。ただし、法令若しくは労働協約に別段の定めがある場合又は厚生労働省令で定める賃金について確実な支払の方法で厚生労働省令で定めるものによる場合においては、通貨以外のもので支払い、また、法令に別段の定めがある場合又は当該事業場の労働者の過半数で組織する労働組合があるときはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がないときは労働者の過半数を代表する者との書面による協定がある場合においては、賃金の一部を控除して支払うことができる。
どういうことかというと、給与天引きできるのは
上記の事務所管理費は当然法令の定めがありませんから、労使協定が必要です。労使協定がない天引きは、違法行為となります。
さらに言えば、仮に労使協定があったとしても会社が当然に負担する性格の費用は天引きすることができません。
例えば事務所管理費という名目であれば、常識的に考えれば会社負担となるでしょう。
となれば、それを一律に社員から天引きしたり、実質社員に負担させたりすることはやはり違法行為の可能性が高いといえそうです。
実は2016年、代理店の雇用義務が進められた際、このような混乱が生じました。
社長といっても労使の専門家ではないため、意図的かどうかは別にして、このような雇用に関する違法行為が行われる事例があったようです。
改正からいくらか年月が経ちましたが、今だに個人事業主感覚の代理店社長さんがいるかもしれないので、自分の身を守るためにも、労基法の最低限の知識ぐらいは持っておいたほうがいいでしょう。
最低賃金はクリアしたとして、歩合制による収入がどれぐらいになりそうかが気になるところですよね。
おおまかに、契約手数料の4割が代理店、6割が募集人の収入という話がよく出てきます。
ただしこの割合は現在の雇用形態になる前の話であって、現在では割合が変わっている可能性があります。
社員としての固定給がある分、歩合給は減っている可能性が高いですので、個別に確認してみてください。
対して保険代理店の社長は、以前より慎重な対応が求められます。
2016年の業法改正以前は保険募集人と「業務委託契約」等を交わし、完全歩合制にすることができました。
契約した保険募集人は個人事業主のため、経費の管理などは全て相手まかせ。赤字になるか黒字になるかも、保険募集人の責任ということで今よりかなりラクだったのではないでしょうか。
それが、従業員として雇用しなければならなくなったため、経費や労務関係の管理負担が一気に増えたと言えるでしょう。
当たり前ですが、社長の年収は自分の営業成績+代理店利益(のうち、役員報酬として受け取ったもの)です。
代理店(会社)の負担が大きくなるということは、それだけ社長の年収に直撃します。
以前よりも、保険代理店社長の年収環境は厳しくなったと言わざるを得ません。
もちろんピンチとチャンスは表裏一体ですので、これをチャンスとみなす代理店も出てくるでしょう。
雇用関係を維持できない代理店は淘汰され、体力のある代理店に優秀な人材が集まるといった事も想定されます。
当然ご存知のことだと思いますが、日本の保険業界自体は逆風下にあり、代理店自体が「規模の経済」や独自の付加価値によって生き残らざるをえません。
今以上に、社長の年収格差が広がっていくことは間違いないでしょう。
保険代理店の社員と社長の視点から、年収について考察してみました。
「保険営業年収1億円!」などという、派手な話を期待していたかも知れませんが、それはあくまでも個別の話。
勤務先が歩合制で、あなたの営業成績がめちゃくちゃ良ければ、そうなる可能性もなくはない、というだけのコトです。
それよりも、正しい雇用関係にあるのかどうかとか、基本的なところをしっかりチェックし、できれば長く勤続した方がよいのではないでしょうか。
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